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東京高等裁判所 昭和55年(ネ)280号 判決 1981年2月25日

控訴人(原告) パルフアム・クリスチヤン・デイオール 外一〇名

被控訴人(被告) 株式会社ジユン・アンド・カンパニー

原審 東京地方昭和五三年(ワ)第一〇三一六号(昭和五五年一月二八日判決、一二巻一号一頁参照)

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

控訴人らは、

「一 原判決はこれを取消す。

二1 被控訴人は、原判決添付目録(二)記載の各商品に関する広告において、同目録(三)(3)及び(4)記載の各表示を使用し、又はこれらの表示と同目録(1)若しくは(2)記載の各表示とを組合わせて使用してはならない。

2 被控訴人は、控訴人らに対し、各金四五万円及び右各金員に対する昭和五三年一一月三日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」

との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決に摘示のとおりであるから、これをここに引用する。

一  控訴人らの主張

被控訴人が、その販売に係る原判決添付目録(二)記載の各香水(以下、これを「被控訴人の商品」という。)に関する広告物において、同目録(三)の(1)及び(2)記載の各表示(文章)と同目録(三)の(3)記載の表示(対照表)とを合わせ掲載し又は同目録(三)の(4)記載の表示(対照表)を掲載する行為(以下「被控訴人の表示行為」という。)は、次に述べるとおり、不正競争防止法第一条第一項第一号にも該当するので、その差止を求める。

1  被控訴人が、被控訴人の商品を宣伝するに当り、その番号に対応して控訴人らの商品(原判決添付目録(一)の香水、以下同じ。)は、被控訴人が世界の名香として認めていることからも明らかなとおり、世界的に著名であり、日本(少なくとも東京、大阪地方)においても、取引者、需要者間に広く知られている。

2  ところで、不正競争防止法第一条第一項第一号にいう「使用」とは、商品に関連して使用される一切の場合を含むものであり、したがつて、商品それ自体に直接使用されなくとも、商品との具体的関連において使用される場合には、広告物、定価表、取引番号等に表示する一切の事実上の使用を含むものである。

本件についてこれをみるに、被控訴人の表示行為は、被控訴人の商品に、一定の番号を付し、その番号に対応して控訴人らの商品名を記載しているのである。したがつて、被控訴人の商品を求める顧客は、右番号を見て、香水の香りすなわち商品の内容を認識するのではなく、逆に控訴人らの著名な香水名の表示を認識し、そのイメージの上に立つてこれを購入するのである。このような点からすれば、被控訴人の表示行為は、広く認識されている控訴人らの商品であることを示す表示と同一又は類似のものの使用というべきである。

3  被控訴人の表示行為は、控訴人らの商品と被控訴人のそれとの間に混同を招来するものである。すなわち、被控訴人の表示行為が前記の態様のものであり、これに香水の香りの創造過程すなわち「同じ調子の香り」とか「香りの調子が同じ」ということがない事実を併せ考えれば、被控訴人の商品を購入する者が通常一般大衆であるから、右顧客は、被控訴人の表示行為により、番号をもつて表示された商品(香水)が、それに対応して掲記されている著名な控訴人らの商品それ自体であるかのように混同を生じ又は少なくとも混同を生ずるおそれがあることは明白である。

二  被控訴人の主張

被控訴人の表示行為は、不正競争防止法第一条第一項第一号にいう「使用」には当らない。同号の規制対象は、商品出所の誤認招来行為であり、したがつて、他人の商品たることを示す表示が使用されていても、それだけでは足りず、使用の態様自体において自己の商品の出所がその他人であると認識されるものであることを要し、そのときにはじめて本号の「使用」に当るものである。

本件についていえば、被控訴人の商品は「スイートラバー」であり、控訴人らの商品とはそれぞれ判然区別されるところであるから、その間に商品の出所の誤認を生ずる余地はない。すなわち、被控訴人は、控訴人らの商品でないものを控訴人らの商品の名称をつけて販売したものではないし、スイートラバーの名称をつけた香水びんの中身が控訴人らの製造に係るもので、控訴人らの商品と同一であるとして(換言すれば、控訴人らの香水を別ブランドで)、販売しようとしたものでもない。

第三証拠関係<省略>

理由

一  当裁判所もまた、控訴人らの不正競争防止法第一条第一項第五号の規定に基づく差止の請求が理由のないものであると判断するものであるが、その理由は、原判決の説示する理由と同一であるから、これをここに引用する。

二  同法第一条第一項第一号の規定に基づく請求について

被控訴人の販売する商品(香水)の名称が「SWEET LOVER」、「スイートラバー」又は原判決添付目録(二)のようにこれに一定の番号(No.130を除くNo.120ないしNo.136)が付されたものであり、被控訴人がこのような商品に関する広告物において、同目録(三)の(1)及び(2)記載の各表示と同目録(三)の(3)の表示とを合せ掲載し、又は同目録(三)の(4)記載の表示を掲載していることは、当事者間に争いがない。

そうすると、被控訴人は、その商品を「SWEET LOVER」若しくは「スイートラバー」又はこれに一定の番号を付したものを自己の商品であるとして販売、宣伝しているにほかならないのであり、控訴人らの商品に付された名称又はその名称に類似するものを使用するなど、控訴人らの商品であることを示す表示と同一又は類似のものを使用しているわけではなく、ただ、自己の商品である香水の香りのタイプ又は調子が、控訴人らのこれに対応する商品のそれと同じであるとしているにすぎない。そうだとすると、被控訴人の商品又は右広告に接する者は、被控訴人の前示の具体的表示とその用い方に徴し、その商品を世界的に著名であるとされる控訴人らの商品(香水)とその香りが似ているとの認識を抱き、その認識のもとに取引に当ることはあつても、被控訴人の商品を控訴人らのそれと誤認し又は誤認するおそれがあるものとは考えられない。

そうすると、被控訴人が不正競争防止法第一条第一項第一号にいう他人たる控訴人らの商品であることを示す表示と同一又は類似のものを使用しその商品と混同を生じさせているものとはいえないから、控訴人らの同号の規定に基づく差止の請求も理由がない。

三  右一、二に述べたところからすると、同法第一条ノ二の規定に基づく損害賠償の請求も理由がないことは明らかである。

四  以上のとおり、本件控訴は、すべて理由がないから、棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 荒木秀一 藤井俊彦 清野寛甫)

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